月光蝶である

OVA「機動戦士ガンダム0083」の小説版。



アニメ作品の小説版はこうあるべきという見本のような小説で、
OVAのストーリーはそのままに、

画面から解読することの出来ない裏設定、心理描写などの詳細を連ねる
副読本的な要素（著者　山口宏氏　あとがきより）

が、徹底されている作品である。

「ガンダム0080ポケットの中の戦争」や「第08MS小隊」などのような
本編とは大きく異なる内容のパラレルワールド的作品は、
同人誌のようなものでやればいいわけで、
公式の作品として出版すべきではないと考える私にとって
「ガンダム0083」の小説版は素直に楽しめた作品であった。

「ガンダム0083」はファーストガンダムとZガンダムの間に起きた出来事で、
Zガンダムで敵方となる「ティターンズ」が出来るきっかけとなった事件、
「デラーズ紛争」が描かれた作品である。
Zガンダムに登場したジャミトフ・ハイマンやバスク・オムも登場し、
OVAでありながら、本編とのつながりも深い。

この作品で初登場したオリジナルキャラクター「ソロモンの悪夢　アナベル・ガトー」は
後にゲーム作品に多数登場したり、プラモデルのMGシリーズでガトー専用ゲルググが
発売されるなど、大人気のキャラクターとなっている。

また、OVAで作画監督やキャラクターデザインをしていた川元利浩氏、
メカニカル作画監督の佐野浩敏氏、メカニカルデザインのカトキハジメ氏が
文中でのイラストを描いているので、OVAと小説のどちらから見ても違和感無く入り込める。

「確か、ウラキといったな…二度と忘れん」


できれば、このような「副読本的」ガンダム小説をもっと出して欲しいものだ。
まずは無茶苦茶作品しかない「ターンエーガンダム」辺りから。