やばち

じゅんさく

2009年03月10日 11:50

庄内弁に「やばち」という言葉がある。
意味を文章で表すと「濡れて不快な様子」といったところだろうか。



昔高校を卒業し東京に出ることになった際、友人たち数名と標準語を話す訓練をした。
今思えば恥ずかしいが、田舎者と思われるのが嫌だったのだ。
庄内弁、といっても私は鶴岡の言葉しか知らないので鶴岡弁になるが、
鶴岡弁を標準語にするのは割と楽である。
1.濁音を取る
2.語尾の「の」を「ね」に替える
この2つに気をつければ大体はいける。

例えば、おなかが空いて肉を食べたいとする。
こんなとき庄内人なら「腹減ったのー肉食いでー。(はらへったのーにぐくいでー。)」と言うだろう。
これに上で挙げた2つの注意事項を適用すると、
「はらへった『ね』ーに『く』くい『て』ー」となり、標準語で通用してしまう。
他にもいろいろと直すべき点はあるだろうが、後は応用でなんとかなるものだ。

そんな話し合いをし、なんとか標準語に対応できそうな気がしていたのだが、
ふと誰かが、「『やばち』ってなんて言えばいいろ?水かがったりしたらなんて言うや」
などと言い出した。
「『冷たい』でね?」おそらくはこれが正解に近いのだろうが、何か違う。
庄内人なら分かってくれると思うが、「冷たい」と「やばち」では印象が違いすぎる。
「冷たい」は「はっこい」なのだ。
その後も話し合ってみたのだが、結局「このやろー」とでも言っておくかということで落ち着いた。
幸い実際にそのような場面に出くわさなかったおかげで
「このやろー」と言ってしまいケンカになってしまうこともなかったが、
あれから20年近く経った今でも「やばち」を標準語で何と言うか答えを知らない。

今度東京から来た人に出会ったら水でもぶっ掛けてみようか。

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